ねこ岳のお話
阿蘇山の根子岳のお話です。
なぜ、根子岳の頂上がデコボコなのか?
このお話を読めば、明らかになります。

 


 
 むかしむかし、阿蘇山が、生まれたときのおはなし。
 いちばん上の兄のたか岳と、その次のなか岳。それにえぼし岳と、いちばん下のきしま岳の四つの山は、それは仲のよい兄弟だった。お父さんの阿蘇大明神もそれがうれしくてたまらなかった。
 ところが、やがて、五番目のねこ岳が生まれてきたそうな。生まれつき、やせっぽちなねこ岳は、末っ子だったので、みんなからもかわいがられていた。けれども、月日がたってひとりだちできるころになると、だんだん欲張りでわがままになってきた。
 
 ある日、お父さんの阿蘇大明神が、
「わしは大和の国へ用事ができ、家を留守にするから、お母さんの言い付けをよく聞かにゃならんぞ。いちばんりこうもんが、早う太うなるけんね(大きくなるからね)。」
と言って、旅に出かけた。
 いちばん兄のたか岳は、兄弟を集めると、
「どうだい、みんな、たこう(高く)なりくらべばせんかい?お父さんが帰る前に、早うたこうなって、りっぱな山になっとくなら、帰ってきたお父さんも喜ぶばい。」
と相談した。
 末っ子のねこ岳は、
「よかたい。そんかわりいちばんたこうなったもんが、阿蘇の国の大将になってよかかい?」
と、提案した。ほかの兄弟も賛成した。
 それから、ニ、三日たって、みんながねこ岳を見ると、ねこ岳の背がとても高くなっていた。えぼし岳は、
「ありゃ、ねこ岳のやつ、いつの間におれよりたこうなったとだろか。おそろしくたこうなったもんばい。」
と、びっくりした。
 なか岳は、日ごとに、高くなっていくねこ岳をみるとがまんできず、ぷんぷんと怒って頭から火をふきだしました。それでもねこ岳の背はぐんぐん伸びていく。
 そのうちに、とうとう一番高かったたか岳まで追いこしてしまった。さあ、こうなるとねこ岳は大いばり。上から見おろしては、「おれが大将、おれが大将。」と、兄さんたちをばかにした。
 どうしてねこ岳ばかりが高くなったのか。これには、わけがあった。
 ねこ岳は、嫌われ者の鬼どもを集めると、
「おれの背を一番たこうしてくれ。一番たこうなったらおれが阿蘇の大将になる。おれが阿蘇の大将になったら、おまえたちは阿蘇の国で、思う存分暴れてよか。」
と言って、たのんでいたのである。阿蘇大明神から祖母山まで追い込まれていた鬼どもは、大喜びで竹田から土を運んできては、ねこ岳の頭の上につんでいた。だからねこ岳は、みるみるうちに大きくなったのだ。みんな寝静まった真夜中に、大きなざるに土をいっぱい入れて、赤鬼や、青鬼が、「エッサ、エッサ。」と運んできては、ねこ岳の頭の上にのせていたのを、兄さんたちは少しも気がつかなかったのである。
 
 ちょうどそのころ、阿蘇大明神が、大和の国から帰ってこられた。すると、ねこ岳が天ににょっきりつき出ているではないか。それを見て大明神は、びっくりしてしまった。ふしぎに思ってやみの中をすかして見ると、赤鬼が、「夜明けまえだからまだよかろう。」と言って、土をはこんでいた。それを見た阿蘇大明神は、初めてねこ岳が高くなったわけを知った。
 末っ子のねこ岳の背が、一番高くなったのを困ったものだと思っていた阿蘇大明神は、
「こらっ!だれにたのまれてそういうことばしよっとか!」
と大声でどなりつけた。赤鬼は、びっくりして、ざるの土を捨ててわいわい言いながら祖母山に逃げていってしまった。
 おこった阿蘇大明神は、ねこ岳のわるい心を直そうと、木の枝でねこ岳の頭を「ビシャッ、ビシャッ、ビシャッ。」とたたいた。
 ねこ岳は、ぼろぼろ涙をこぼしてあやまったが、阿蘇大明神は、おかまいなしにたたいたので、頭がぼろぼろになってしまった。
 そのときの、ねこ岳の涙がたまって、阿蘇谷に、大きな湖ができた。
 今でも、ねこ岳の頭の上は、のこぎりの歯のようにデコボコして、たか岳より低くなっているが、それには、こんなわけがあったのだ。
 
 こうして阿蘇の山では、たか岳がいちばん背が高くなった。なお、おこって火を吹いたなか岳からは、今でもたえず煙が立ちのぼっている。
 赤鬼が、捨てていった土は、今は萩岳という山になって、波野村の東のほうに残っている。
 鬼どもが、土を掘ってきたところが、今の竹田盆地である。だから、九州山地の中で、あそこだけが低くなってしまったのだそうな。

 おしまい。

 


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